すぐわかる!劇場版BECKのあらすじを解説

【BECKのあらすじ】
高校生のゆきお(コユキ)は、NY帰りの天才ギタリストのリュウスケと出会い彼のギターテクニックに魅了され、自身もギターを始めるのであった。
音楽と出会ったコユキの世界は180度変わりいつしかバンドが生活の中心になっていく。
そんな中でコユキの高校生らしい純な悩み、バンドを続けていく事の楽しさや大変さ、仲間と共に目標に向かっていく情熱を描き出す青春ストーリーとなっている。

【とある出来事をきっかけに冴えない男子高校生の日常が一変!?】
日々をつまらなく過ごしていたコユキは、友達も守るものも無かった。
毎日クラスの不良グループにパシリにされ、自分が生きてる意味も分からなかった。
そんな時、外国人にいじめられていた犬のベックを助けたことがきっかけでリュウスケと出会う。
その出会いによって、彼の淡白で色のなかった毎日が輝きだすのだ。
NYでバンドを組んでいた帰国子女リュウスケのギターに魅せられ、自身もギターを始めたコユキは、その楽しさに取り憑かれたように練習を重ねるが、最初は拙い指使いで中々上達しないもその努力が実を結び、リュウスケのバンドに加入する事となる。
リュウスケのオリジナルバンド「ベック」は才能を持ち合わせたボーカルのチバ、ベースのタイラ、ドラムのサク、そしてギター初心者のコユキ5人で結成された。
そんな中バンド活動を阻む様々な問題が5人を襲い、それぞれが失敗や挫折を繰り返していくが、音楽への情熱を原動力に変えBECKの5人は成長していく。
大きな舞台を夢見た彼らのその先に見えた景色とは。

【なぜ「無音」なのか、あなたなりの「声」を感じて欲しい!】
ライブハウスの臨場感やステージに立つバンドマンがかっこよく見える様を上手に映像化し、バンドをよく知らない人でも、「バンドってこういうものなんだ」と想像しやすくなっている。
バンドが苦手だと思ってる方やあまり興味が無い方も、バンドに対するそういったフィルターを感じず見て頂ける作品。
本作品の見どころといえば、作中度々描かれるコユキの「無音の歌声」だろう。
コユキの歌声は、天性の歌唱力の持ち主として聴く人全ての脳裏に広がるイメージが映像化されている。
だがその歌声は常に「無音」である。
それは観る人全てに「コユキの歌声」をイメージしてもらうためか。
ほかの演奏シーンやライブシーンはガンガン鳴り響いてるにも関わらずコユキが歌う瞬間だけ無音になるという発想は、映像、音源、その全てを逆手にとるかのようなやり方であり、映画としては極めて大胆で挑戦的な表現の仕方ではないだろうか。
魅力的だと思う歌声など、人それぞれでそこに何を感じ、その場面をどう捉えるかは観る人の自由なのだ。
そしてさり気なく出演する、数々のアーティストたち。
分かる人には分かるスタジオやアーティストを見つけながら見ていくのも楽しみ方のひとつかもしれない。

【この映画が伝えたいのは少年たちの胸の奥に眠る熱い想い】
賛否両論飛び交うこの映画。
例えばこれをひとつの音楽作品として見た時、それはあまりにも単純明快に描かれ過ぎてそれなりの評価を受けるだろう。
バンドというのはそう簡単にはいかないものだ。
誰しもが挫折を繰り返し、失敗を恐れ前に進めなくなる時が必ずくる。そういった葛藤すら、トントン拍子で乗り越え若い彼らがあれほどのステージに立つことを現実的に考えたら先ずありえないだろう。
だがこの作品は1人の少年、そしてメンバー達が音楽を通して友情、愛情、諦めない気持ち、続けていく事の大切さを学んでいき、自立するまでのヒューマンドラマのようなものだ。
先程も書いたように、音楽を続けていくと自身の限界を感じたり、バンド活動が円滑に行かなくなるなど様々な問題が起こる。その大変さを描きたい訳では無い。
それでも音楽と楽器を愛する気持ちがあればどんな困難も乗り越えられるんだと、この映画は伝えたかったのではないだろうか。

【大事なのは本気で音楽を愛する事、大切なのは純粋な気持ちで音楽と向き合う事】
最近楽器を始めたという人や、これから楽器を始めたいという人や、楽器との向き合い方が分からなくなっている人などが見た時、前向きになれる映画だと私は思う。
楽器というのは、1日やった程度では上手くならない。何日も何時間も練習を重ねた分の積み重ねがそのまま己の技術となる。その時間をどう過ごすか、楽しくやるのか、苦しみながらやるのか、がむしゃらにやるのか。
人それぞれ楽器との向き合い方はあるが、純粋に音楽を楽しむ少年たちの姿はあなたの背中を押してくれるに違いない。
誰しもが音楽と本気で向き合った時一度は恐れるものだ。でもそれは、更なる高みへの第一歩にしか過ぎないということを、この映画は144分という限られた時間の中に凝縮しているのである。だからこそ物足りなさを感じる人も居るだろう。